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老大学生奮闘記#14 生ける神

 

 前回触れましたモーセによる燃える柴の経験は、彼の心に強烈な経験として焼き付けられました。神の臨在の火が彼の魂に点火したと言えるような経験でした。これによって二つのことが古代イスラエルに消えることのない歴史の刻印として押されました。一つは、エジプトの奴隷であったイスラエルの民が出エジプトを果たし、自由の身となったことです。もう一つは、彼の魂に点火された印象を五つの書として書き記したことです。現在これは、聖書の最初の五つの書、創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記として私たちの手元に残されています。

 

 これは古代ヘブル語で書かれています。当時イスラエルに文字はあったのでしょうか。確証はありませんが、あったと予測することは困難です。なぜならエジプトでの奴隷生活は数百年は続いていたと考えられます。文字文化があったとはとても考えられません。エジプトで教育を受けたのはイスラエルではモーセが初めてであったと思われます。彼が学んだのはヒエログリフですが、聖書はアルファベットで書かれています。

 

 アルファベットで書かれたということは、多くの人に読んでほしと言う意欲の表れでもあります。事実、五つの書が書かれたことからイスラエルには教育が起こりました。彼らは文字を学び五つの書の読みました。イスラエルではこうした学校が早くから行われました。これは今では預言者学校と言われています。熱心な人々はモーセの書を研究しました。そして彼らの心は燃やされたのです。ここから生まれ出てきた思想は「神は生きておられる」と言う信仰の告白です。イスラエルは神の特別な御心によって選ばれたという思いです。

 

 民に対しては、神は出エジプトと言う歴史的事件を通して現れてくださり、シナイ山の麓で、二枚の板に書かれた律法を通して現れたのです。教育を受けた人々の中から、預言者として立つ者もあらわれました。彼らの第一の任務は律法を民に教えることであり、第二に、イスラエルの歴史を記録していくことでした。この作業はモーセの時代から約千年続けられ、ユダ族の捕囚からの帰還まで続けられたのです。この歴史的事業のインパクトは大きく、21世紀の現在まで、ほぼ全世界をおおう地域で続いているのです。 

 

            協力牧師 Amos (A.S.S.)